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ユング心理学と見立て

ユング心理学と見立てとの関連について、やや専門的に知り得ていることを書く。ユング心理学は基本的に、補償作用と展望の心理学である。


タイプ論。劣等機能の開発を通して全体性(totality)を得る。

外向的な人は内向的な側面を、外向的な人は内向的な側面を開発する必要がある。

思考タイプの人は合理的側面が強いので女性的な側面を、感情タイプの人は男性的な思考の側面を開発する。感覚タイプの人は神秘的側面を、直感タイプの人は現実的側面を開発する必要がある。

基本的には、補助機能として、外向的な人は思考か感覚機能を、内向的な人は感情か直感機能を用いる。未分化な機能を開発する際は、主機能を補助機能にずらして開発していく形となる。とはいえあくまで便宜上であり、臨床では男性的か女性的か、現実的な側面を強化するか情緒的な側面を開発するか、として見る。


コンプレックス。

コンプレックスに関しては、基本的にその人の未発達の課題がコンプレックスの塊まで発展しやすい。その人の特徴的な気質(強さもしくは弱さ)から考えると分かりやすくなる。基本的にはどの時期に課題を乗り越えるだろうかと見立てておき、本人が課題に直面した時や乗り越えようとした際に必要な情報や解釈や共感を与えて見守る(時熟)。

実際的には、投影と同一化が「嫌いな人」「苦手な人」に向けられ悪口や愚痴を言うのと、かなり歪んだ「良い人」像が語る人自身や他者に向けられるので、両価性を考えながら共感と指摘をする。


個人的無意識と普遍的無意識。心像と象徴。

夢や表現されたものには普遍的無意識が反映されることがあるが、その場合は元型を考える。例えば、太母(great mother)では地や子宮と、呑み込まれる死(もしくは安楽)がテーマであり、自我の確立に向けた合理的な強さを開発する必要がある。

他にいくつか挙げてみる。河の向こう岸へ渡ることは女性が男性性(自我確立)に向けて自己投棄する時期が来ていることを示している。あるいは男性は竜退治によってアニマ(女性か宝)を手にして自我を確立するし、女性は「知ること」を通して自我確立へと出発する、など。神話や昔話、象徴を拡充法(amplification)として伝えるときは、本人が展望を持って勇気付けられるときのみ行う。

基本的には、元型は展望を見るために有用となる。例えば影はその人が生きられなかった反面であり、適当に自我に取り入れることで解決する。子供は新しい可能性が生まれたことであり、その可能性を育てる必要があることを示している。トリックスターは統合性を乱し、権威的な一面性の改変が必要とされていることを示す。老賢者は成熟に向けた人格発展の展望を示す。

基本的には個人的無意識の心像を元型や象徴と結びつけて、補償されているものや展望を見る。心像や象徴を解釈するコツは、元型や象徴を先に知っておき、自分ではせいぜい元型と象徴的な連想をするくらいに留め、展望に向けた合理的な説明をいっぺんに感じ取ること。

基本的に上記の態度で接していると、ときに退行現象が生じてくるが、留意すべきは、まず第一にカタルシスによるストレス浄化効果、第二に依存形成について、第三に現実に戻れるか否か、最後に新たな可能性を取り入れた創造性を慎重に考慮する。


夢分析

基本的に夢が何を補償しようとしているか、展望を見せるか、あるいは警告しているかを見る。基本的に夢のなかで転換点といえるポイントでどう変化するか、夢を見る前と見た後で何か態度に変わったところはあるかを考える。知らない人(もしくは他人)の登場人物は心的要素として見て、身近な人は実在の人物との関係を見る(主客水準)。

夢においては、思考機能が刃として示され、感情機能が女性として表される。あるいは暴漢は自我に取り入れられていない男性性だったりする。結局、夢は過剰な表現にして見せるため、夢=本人であると考えない方が良い。夢の内容は無意識による赤裸々な描写ではあるが、主に補償作用を目的としているので、その人の自我にどう取り入れられたか、ということを含めて本人と考える。

死と再生のモチーフ。人は大きく変わろうとする際に死の経験に向かう傾向がある。実際に危険であるので細心の注意を払う。自殺傾向のある人や解離性人格障害の人には過度な直面化は避けるべき。


アニマとアニムス。自己。

思考が刃で、身体が力であるなら、ペルソナ(人格的な仮面)は鎧にあたる。さらにペルソナの内側には女性的な魂があると考える。精神(ガイスト)は風や精霊のようなものと考える。自己は精神から魂までを含む自分の中心と考える、という構図が基本的概念になる。

母親像(魔女や竜)を殺し分離した美しい女性像がアニマの基盤となる。男性においては太母から自立できているか(母子一体の段階)、性的なことを受け入れられているか(生物学的段階)、女性性と適切な関係を築けているか(ロマンチックな段階)、と進むのが実際のところ。

アニムスは父親像から分離した男性像となる。女性は基本的に父親を殺しはしなかったように思う。典型的なのは自分を好きと思ってくれている「足りない」父親から、小人を経由して、王子様へと進む。あとは感覚機能が強い筋肉質な人や、思考機能の高い知的な人がアニムス像となりやすい。意外と老賢者は女性の方に現れやすい気がする。

ちなみに男女ともに母親の影響による精神発達の歪みは大きい。男性は女性関係を見ると分かりやすく(マザコンなど)、女性は母親から心身のイメージの取り入れを図って混乱している場合(分かりやすいのは拒食症など)が多い。

結局、アニマやアニムス、父親像と母親像との過度な同一視は避け、適切な関係を築いていくことが大切とされる。


数字の意味について。

0はウロボロスなど全と無が混合した状態。1は個の自覚、2は対決と交流、3は発展と可能性、4は統合と安定、曼荼羅などを示す。夢や作品などで数に注目すると、段階が見えてくるものもある。

夢分析は個人で行うのは難しく、また夢診断と異なり人格発展の理論を援用するものであるが、象徴学的な解釈をしていそうな夢診断や夢占いなどを見ることでも、ライトに夢の補償効果を高めることができる。個人で行う場合は悪化する危険性があるので、暇つぶし程度の浅い感覚で楽しむことが必須と思う。


自我の確立と、無意識との適切な関係を築くことがユング心理学の目標となる。自己がコンプレックスを布置し、乗り越えるためのヒントを夢や無意識、共時性を通して教えるので、自我はそれを通して経験を積み、取り入れることで次第に自己実現が果たされるというモデルになる。ユングの第一人者である河合隼雄は、因果律による操作性を排し、道(タオ)の道筋にその人を戻してあげることが大切と説く。


ユング心理学は、表現や作品といえるもの全てに対して適用することができる。象徴学的な分析の誘いとなるので、そのようにして楽しむことが良いと思う。


昔の記憶だが、思いのほか思い出すことができた。
自身の経験を振り返ると、思考は哲学を、感情は宗教を、感覚は今ここを、直感は共時性を、詰まるところ志向してきたように思う。
象徴やモチーフや共時性が散りばめられていれば、まだ読んでいない物語の先を予測することはできるようになった。それはあたかも予知能力者のような気分で面白い。単に面白いからやっているだけで、これを他者に伝えていく情熱はもう残ってはいない。

ユングは、グノーシス主義として分類されるらしい。グノーシス主義とは、創造主の神が必ずしも善なる神ではないという考え方。
確かにそうであれば、「意志」の中に悪なるものが含まれることや、一方で自然や数学が美としてのイデアを持つことと整合性がとれるので面白い。ちなみにプラトングノーシス主義として分類されるらしい。

これからは、イデアや芸術について、もっと深く知りたいと思う。