誘導と嘘の分析について

メンタリストDaiGoのメンタリズムが心理学を使っていると聞いたので分析してみる。

今回は、主に誘導と嘘の見抜き方の話になるので、あまり好まない人には面白くないかもしれない。


メンタリストDaiGoという人物について。慶応大卒、人工知能関連の研究室に在籍していたとのこと。ノンバーバルコミュニュケーションや現代催眠、社会心理学を含む広範な心理学を援用したパフォーマンスや公演、書籍の執筆などの活動をしている。ちなみに猫を飼っている(重要)。

速読が得意で1日に興味のある本を10冊や20冊読むとのこと。乱読傾向や速読法には少なくとも多動性の傾向が見られるように思う。有から有のアイデアを次々に生み出すところも多動傾向の人の才能といえる。


DaiGoのメンタリズムは、主にフォーク曲げなどのマジック的なものと、選択の誘導と分析を用いたパフォーマンスとに分けられる。

今回は、後者の選択の誘導と分析について考える。


パフォーマンスでは、選んだものを当てたり、物や情報を隠し持っているか、持っていないかを当てたりしている。

選択の誘導方法は以下の通り。

1.選びやすい確率

セッティングについて。全くのランダムに見える選択肢も、そもそも確率に偏りがあるものが多い。例えば同じようなカラーボールに見えて目立って見える「刺激色」や普段見かけないトーンの「変わった色」など。主張が強いもの、もしくは一つだけ特異なジャンル違いのものは選びづらい。最もニュートラルには、公共性の高いものか、自己主張が強過ぎず浮いて見えるものが選びやすくなる。

置き方や色の配置の組み合わせで、選びやすいものに誘導するのが基本的な考え方。


2.「自分のもの」と「自分のものでないもの」

選択について。

基本的に、自分と関連するものは選びやすく、自分と関連しないものは選びづらい。簡単に言えば、「自分のもの」と思っているものは選びやすく、「自分のものでない」と思っていると選択しづらくなると思われる。選びやすいものは例えば「自分の好きな色」「使い慣れたもの」「セルフイメージに近いもの」などがある。

広告やショッピングなどを考えても、やはり自分と関連しないものや縁のないものは圧倒的に選びづらかったりする。いかにその人にとって良い文脈で関連付けて関心を持たせて注視してもらうかが、効果的な販売促進に不可欠となる。

話を戻すと、「自分のものでない」ということを相手に思わせれば、選びづらくなることを誘導できる。例えば高く持ち上げてみせるとか、大きな音を立ててみせるとか、腕や手や物で覆っておくなど(心理的リアクタンス)。ちなみに利き手でない手で選ばせるのは、「奥の方もしくはパーソナルスペースに近いところにあるもの」「安全なもの」「公共性の高いもの」を取りやすくなる確率を上げていると分析できる。

周囲の人との協調運動(ミラリング)が見られる人はマジョリティに勧められる方向に素直に従いやすく、一方、腕を組むなど敵対的なボディランゲージを発している人は「自分で決める」という余地を頼りにして選択する。心理的リアクタンス(反発)を提示して反発の無いところで選ばせたい方向に引寄せていくのが基本的な方法。


3.言葉による誘導(暗示)

言葉による暗示は現代催眠の技術に拠っている。例えば、専門用語の羅列や複数の選択肢を提示して迷ったところに暗示を差し込む(混乱法)。一つの単語を連想や語調で強調したり弱めたりして印象に残すほか、視線が固定化されるところに印象に残したいものを見せたり言ったりするといった手法。

補足として、周辺視野に暗示を提示する(プライミング)、嚥下時や驚き(surprise)時に暗示を差し込む、触れた瞬間や特定の音、好き嫌いの視覚領域に暗示を差し込む(アンカリングやアセンブリ)など。ミラリング反応の利用やヒューリスティックな連想(潜在意識は複雑さより簡単な解釈を求める傾向)も現代催眠の領域に思われる。

結局、催眠に掛かっているかは外からは分からないので、どこに心理的反発を提示し、どこに引寄せる力を提示するかを意図して喋っているかが大切と思われる。心理的反発の提示はあからさまに、引寄せる場合は控えめだが心地良く印象に残る感じにしている。


4.数字の意味

基本的に1~5までの数字を選択する場合、先頭から最後尾という考え方をした方が分かりやすい。例えば、講堂や座席でどこに座りたいかなどのイメージに近い。

1と5は自己意識が強い人で、先頭(リーダー)に立ちたいか一番後ろに立ちたいかという意味と同じ。

3は最も真ん中なので、輪の中心にいることを意識している人もしくは子どもっぽい心理状態の人が選びやすい。

2と4は中途半端な位置なので、3に比べて目立ちたくない人が選びやすい。2は先頭(リーダー)に近い位置でやや積極的であり、4は後ろから厳しく見ていたい人が選びやすい。

ちなみに象徴的には、1.個の自覚、2.交流と対決、3.子どもと可能性、4.統合と安定、5.自由と破壊となる。


5.視線と注視時間

視線や注意の選択は眼窩前頭前皮質の機能に拠っている。基本的には嫌悪するものから目を背け、好ましいものに目を向ける。基本的な考え方としては、注視時間が長いものほど選択されやすい。

注視時間を長くしたり、最後に注視するように操作すると、主観的により好ましいと錯覚するということが実験では明らかにされている(ex:カスケード現象)。

視線誘導の方法は、こちらの視線やアイコンタクトによるもの(驚き表情で指示するとより確実)、目印や線で指し示すなど。これらは日常では使いやすいけれど、パフォーマンスではあまり使われていないかもしれない。



嘘を見抜く方法について。

基本は表出されているもの(expression)の解釈と、質問に対しての反応を反証検討することによってなされる。さらに周りの雰囲気や緊張感の増減を読むことで精度を上げる。

1.微表情(micro expression)について。

①怒りは、眉が中心に寄る、唇が結ばれ薄くなる、鬼の形相になる。

集中している時や話が難しいときも眉間に皺が寄る。緊張しているときも唇は結ばれることに注意する。

②嫌悪は、眉から鼻と口元にかけてが縦に寄る。目の下がひくつく。

「嫌だな」と思った瞬間に出るので、理由を考える必要がある。左右どちらに反応が出たかでその人にとっての意味が違うこともある。

③侮蔑は、片方の口端が上がる。

当てが外れていたり、自分が(道徳的に)優位だと感じた(思いついた)瞬間に表れる。この表情の次の言葉は上位者の余裕で仕掛けてくるので注意を要する。

④恐怖は、目元は驚きよりも大きく開く。頬が横にひきつる。

余談だが、サイコパスが認知不可能な表情。日常やパフォーマンスで普通見ることはない。

⑤悲しみは、顔全体が感情的に動く。口端が下がる、眉が八の字になる、瞼が下がり目元が淋しそうな色を帯びる。

目元から読み取りやすい表情。眉を上げて主張を訴える癖がある人もいるので注意が必要。

⑥喜びは、顔全体が感情的に動く。口端が斜め上、頬に向けて引っ張られる、眉が山の形になる、目尻に皺が入り目元が嬉しそうな色を帯びる。

目元の眼輪筋を見ると作り笑いかどうかは判別できる。意外なことに慰めの表情も同一の表情となる。傷付いたときや悲しいときに自分を慰めようとして表出されることがある。過度なプレッシャーからの解放で表出される場合は直前までにプレッシャーが高まっていたと解釈する(面白いことを言った訳ではないのに笑った場合)。

⑦驚きは、目元が開く、口が開く。恐怖と異なり感情的には中性的。

基本的には周囲の人間に対して「注目せよ」という意味がある。分析が当たっていて関心したり興味を示してきたりすると口が開いてくる。


微表情はほんの短い時間(0.5秒未満)しか表出されないので、あまりに短いときは「どの部位が」「どの方向に」動いたかで判別する。慣れてくると表情に対してアテレコをしていると先に相手の言う言葉(感情内容)が読めるようになってくる。

表出された反応に対して前提条件を頭の中で差し替えて真偽を反証検討する。相手の性格だけでなく状況も理解していないと自分の思い込みで読み違えることになる。


2.緊張のグラデーションを読む

闘争-逃走反応が賦活されると、自律神経系の興奮が生じる。嘘をつく緊張による心拍数の増加や変な汗(皮膚電位反応)を計測したり、眼の周りの血流の熱変化を検知する嘘発見器などがある。現場では当事者しか知り得ない情報(凶器など)をぶつけて特殊な反応があるかで絞っていくとのこと。

アナログで行う場合はプレッシャーがかかると筋緊張が生じることを利用する。肩や腕や姿勢、首筋や顎周りから表情の緊張を見たり、実際に触って動かしたりすると分かりやすい。

脅威(真実)が近づくにつれて緊張は高まり、遠ざかるにつれて緊張は下がり余裕が出てくるというのが基本的な考え方。従って闘争-逃走反応が賦活されるように挑発やプレッシャーをかけると反応が顕著になり分かりやすくなる。

自分が近づいたり遠ざかったり、選択肢を近づけたり遠ざけたりして緊張の度合いを読む。読まれるのではないかというプレッシャーをかけられていると、緊張を和らげる瞬間に唾を飲み込んだり舌を動かしたり、自分で顔や身体を触るようになったり、硬直したり顎を上げたり、逃げたそうに身体を揺らしたり、目線が揺れて周りを見たり背中を丸めたりするようになる。緊張(プレッシャー)を遠ざけてみて余裕が出たり笑顔が出たり調子に乗ってくると絞り込みは正解している。またプレッシャーが外れていると相手に軽蔑や怒りの感情が生じてくるので注意する。

緊張の度合いは瞬間的なものだけでなく、細かい部分を総合した雰囲気のようなところもある。慣れてくると立ち姿だけでも緊張のレベルと種類の違いで見分けられるようにはなる。ただ壇上に上がるだけで緊張しやすい人など、性格と状況を読み違えると思い込みで間違えてしまうので注意する。

というのが読み方と分析となる。


パフォーマンスの流れをまとめるならば、まず誘導で選択肢を絞っておいて、それに合致した適当なことを言いながらプレッシャーを与えつつ表情と緊張を読み解くということ。

喋りながら読みながら反証検討する3つの頭を同時に使えないと実践では使えないので意外と難しい。さらに誘導を仕込むとなるとかなり頭を使わないとできない。

実際に映像を見返してみると、効果があるのか分からないが相当の数の誘導を仕込んでいることが分かる。



嘘を見抜く方法を滔々と述べてきたけれど、嘘をつくのには理由があって、理由の殆どは、人間関係を円滑にする白い嘘(white lie)だったりする。従って、何でも暴けば良いというものでもない。

加えて、嘘を暴くにはプレッシャーをかける必要がある。パフォーマンスでは誘導と統計を利用すれば良いけれど、現実場面では(状況)証拠を押さえて自白させるというプロセスを踏む。

しかも自分の経験則では嘘や不正を働くのは8割が状況の誘因によるもので、性格が原因となるのは2割程しかない。8割の状況を変える力がないのであれば、嘘を見抜くことに意味はないと思う。

もうそんなことはしたくないし、そういったこととは無縁の世界で生きていたいと思う。



嘘を信じられなくなったのは、何かを期待したから。裏切られた気になるのは、何かを信じたから。


数多の誘導のなかで、自分が信じたものの為に生きていたい。

そういう自由のなかで生きていたいと、今は思う。


最近は猫を飼っているというだけで興味が沸いてしまう。猫を飼うという夢くらいは、諦めないようにしよう。