レジリエンスについて

レジリエンスについて知り得ていることを書く。

 

1.レジリエンスとは

レジリエンスとは、失敗からしなやかに立ち直る力のこと。逆境力。

 

資質的レジリエンスと獲得的レジリエンスがあると言われている。

生まれつきに備わっている資質的レジリエンスには、

①楽観性(適切な期待)

②社交性(外向性)

③統御力(調整能力)

④行動力(自発性)

獲得的レジリエンスには、

①問題解決志向

②他者心理の理解(共感性)

③自己理解

がある。

獲得的レジリエンスは鍛えやすいのに対し、資質的レジリエンスは変わりにくい。とはいえ、現実的に問題を解決した上での楽観視や、他者と共感した上での問題解決の先読みなどは、レジリエンスを高める上で重要なところと思われるので、そのあたりを書き留めていきたい。

 

近年話題のHSP(Highly Sensitive Person)は、敏感さ故にレジリエンスが低くなる傾向があるといわれている。ただし、豊かな内的世界を表現もしくは発揮できる場所があり、将来への楽観視ができる状態であれば、レジリエンスは高まるという論文がある。

余談だが、悲しみ表情の検知能力や、自身の心拍数の変動に敏感な人ほど共感性は高まる。HSPの人や慢性的なストレス下にある人はこれらのバイオフィードバックに敏感であるので、思い遣り行動は誘発されやすい(つまり優しい)。

ただ、思い遣り行動とは、科学的には“自身のネガティブな気持ちを抑制して(隠して)向社会的な行動を(自身の不快感の低減の為に)取ること”なので、他者を助ける余裕がなかったりすると、敏感な人はむしろ攻撃性が高まる。さらに自罰傾向にアグレッションが移行すると、抑うつになりやすいので注意を要する。

他人に親切にしたり、自分に負担にならない程度に他者を助けることで、レジリエンスは高まると言われている。繊細さや敏感さがある人は、自分と周囲の人の負担をいかに調整するかが、レジリエンスの鍵となる。

 

2.ソーシャルサポートについて

ソーシャルサポート(自分を助けてくれる存在)を本人が感じられるかによって、レジリエンスは増減する。

ソーシャルサポートを感じるには、自身の感情へ気付き、必要な援助を求めることが大事である。

自身の気持ちに気付く能力を高めるには、身体感覚(内受容感覚)へのマインドフルネス、出来事+感情の描写能力(明確に具体的に言語化する力)を高めることが有用である。その為には、他者に状況と気持ちを説明する経験を積み重ねることや、紙に出来事と気持ちを書き出す筆記開示を行うなどで引き出していくことができる。

余談だが、自分のことを話すのに慣れていない人には呼び水として本人の好きなことを他者に教える形で説明する練習をすることで、説明能力を引き出すこともできる。

感情の描写能力は、体験について一言で気持ちをまとめること(ラベリング)から始めて、『~だから○○だった』『~だけど○○だった』と説明することに慣れておくことで、高めていくことができる。一旦言語化し、受容した後は、『じゃあこうしよう』という解決行動を取ることができる。

ちなみに、過去の辛い体験は、繰り返し言語化するなかで現在の自分に影響するポジティブな意味を見出だしていくことも良い。言語化していくなかで、体験にまつわる印象や、意味が変化していくことを知ることが大事。

レジリエンスが最も高い部類の人(特殊部隊の隊員などを含む)は、状況(環境)の変化に敏感であり、自身の内受容感覚(心拍数や身体感覚)の変化を敏感に検知しながら、最低限の動揺しかしないと言われている。逆に、環境や身体の変化に鈍感であったり、無視する場合は、後からパニックになりやすく、レジリエンスが低くなる。

従って、レジリエンスに必要な問題解決能力とは、些細な変化に気付き、(視野を広く持ちながら)柔軟な対応によって行動を変えられることといえる。

出来事を説明し、気持ちを受けとめ、柔軟な問題解決行動の一環として、必要なソーシャルサポートを得ていく(社会資源を活用する)流れが理想となる。

 

3.現状認識を厳しく見る

レジリエンスを高めるには、柔軟な問題解決志向と共感能力が必要になることは前に述べた。

『現状認識を厳しく見る』ことで、そのどちらも高めることができる。

他者に共感する際に、最悪のシナリオを想定してから話を聞く場合と、普段通りに話を聞いた場合の共感能力には差が出ることが、最近の医療関連の論文では言われている。近親者であればある程、最悪のシナリオを想定しやすいが、他人であればある程想像しなくなっていくことも指摘されている。共感的に話を聞く際は、最悪の状況やシナリオを想定しながら話を聞くことは、一つポイントとなる。

また、他者からの批判に対立・硬直してしまっては、柔軟な問題解決からは遠のいてしまう。批判点は包含・包括しながら、共感・受容し、問題解決を目指す。A(批判)=B(対応)というより、A(批判)⊂B(対応する人)であった方が良い。批判を受けた際に感情的な理由で対立するよりは、包含できる批判点であれば、共感してしまって、それも踏まえた上で対応を提示した方が良い。

もし合理性が破綻するのであれば、批判点は感情的に表にせず、疑問点として提示する。ちなみにその際は、無知を装い教えてもらう形で聞く方が相手の心証が悪くない(ex:“無知の知”)。

現状を厳しく見て先読みをして、共感的にどのような問題が起きてくるかを想定し、(相手を尊重しながら)先手で対応を取っていくことで、自他ともに無用な混乱なく前進していくことができる。

 

4.呼吸と自律神経について

最後に、呼吸でレジリエンスを高める方法について。一般に、マインドフルネスは自律神経を調整し、レジリエンスも高めることが言われている。ここでは、ロシアの特殊部隊のブリージング(システマ)を簡単に紹介する。やり方は、緊張や心拍数の変化を感じたら、『(口から)音を立てながら息を吐く』これだけ。自身の感覚をモニタリングをする訓練と、息を吐くことで適度な緊張に身体の状態を戻す目的で行う。

慣れてきたら、息を吐きながら骨盤に背骨と頭蓋を乗せて姿勢を整えたり、弛緩法(一部の筋肉を緊張させ吐く際に弛緩させる)を組み合わせても良い。習慣化させてしまえば、レジリエンスの基礎的な部分は飛躍的に伸びる。

ちなみに、手っ取り早く自律神経を上向きにさせるには、熱めのシャワーで延髄あたりを20~30秒温めること。もしくは貼るカイロをシャツの首裏付近に貼っておくことで、メンタルのネガティブな気分を引き摺りにくくする効果がある。

頭痛持ちには向かない場合があるが、自律神経の乱れからレジリエンスが低くなっていくタイプの人には効果がある。

根本的には、HIITトレーニングなどの高強度の運動で心肺機能を高めると、メンタルの不安定さは(ある程度)改善する。

 

 

レジリエンスは、成功・失敗、生きる・死ぬ、逃げる・戦う、二律背反のなかで必要とされるテーマのように思う。

本当にレジリエンスがある人は、そうした二律背反に惑わされずに生きていける人であって、レジリエンスなど、本来は殊更に必要とされない社会であってほしいと思う。

 

 

これからも、テーマを変えながら、変わり続ける自分で在りたいと思う。